N・I・K・A・I  怖い話

家が古くなってくると、あちこちから、床のきしむ音がしたり、ドアの扉を閉鎖するだけで、変な音がなったり、はたまた風がふいて、窓が震える音だったり、すきま風だったり。どこからともなく、変な音がすることって、よくありますよね?

しかも、その音は、なぜか 一人になった時だけ、気になるんですよね。誰もいないはずの部屋から聞こえる音とか、怖いと何度感じたことか。

でも、音を出すことで、自分の存在を知らせようって言うこともあるんです。例えば、ガレキの埋もれた下で、助けを呼ぶために、音を出して知らせたり、生きているってことを知らせるように、音っていうのは、とても大事なのです。まぁ、それが、人間ではないものが出す時もありますけど、それだって、何かを求めているから、音を出しているのかもしれませんよ?床のきしみだって、早く直してくださいというメッセージだとも思えませんか?

--二階--  KOWAI KOWAI*

そこは、住宅街から、離れた場所にある一軒家。高架橋のそばにあり、時折電車が通過する音がうるさいくらいで、それがなければ、とても静かな場所。

彼女は、そこに一人で住んでいた。彼女の元夫は、他の女性の所へ行き離婚している。彼女の息子も一人いるが、すでに社会人となり別に暮らしている。

彼女の家は、それほど大きくはない家だが、二階がある。二階は、息子が使っていた部屋がひとつと、以前寝室として使っていた和室があるだけ。今、一人暮らしになってからというもの、一階にある和室を寝室として使用し、生活のすべてを一階でこなせるようになってしまったので、二階へと上がることはない。

一人で暮らすには、大きすぎる家ではあるが、離婚もして、家の家賃がかからないことを考えれば、自分一人の収入だけでもなんとか生活していける。家を売ればいいと思うかもしれないが、住宅街から離れ、高架橋のそばにあるという条件だけで、なかなか売れないのが現実だ。それに、築年数も古い。土地を更地にして売却したところで、売れるかどうかもわからない。だからこそ、彼女はそこに住んでいるのだ。

最近、少し悩みがあると彼女から相談をうけた。

「実はね? 二階から 変な物音がするの。」その音は、床がきしむ音のように聞こえるとのこと。自分以外誰も住んでいない家なのに、時折、そういう音がするというのだ。

彼女は、昼間仕事をしている。基本的には、朝出かけると、夕方になるまで帰らない。家に帰っても、食事を準備して、食べたら、テレビを見て、眠るだけ。というような毎日を過ごしている。その眠っている時間に、その音がするというのだ。

一度、その音を確かめるために、二階へと上がってみたけれど、特別変わったことはなく。どこから、音が出ているのかもわからなかった。
原因がわからないまま、1ヶ月が過ぎた頃。

 彼女は、足をねんざした。周りには、「ちょっと家の中で転んだだけだよ。」と言っていたのだが、実は違っていた。

また、夜中に、いつもよりも大きい物音が聞こえたので、二階へと上がったのだという。今度は、何かの扉をひっかくようなそんな音。二階へと上がって、明かりをつけようとしたところ、なぜか和室の明かりがつかない。そこで、一階へと戻って、懐中電灯を取りに行くことにしたのだ。すると・・・

ドーン  と何かに背中を押されたというのだ!

階段の上から下まで落ちたわけではなかったため、足首のねんざだけで済んだものの、階段を下まで落ちていたら、もっと大ケガをしていたに違いない。

それからというもの、彼女は、ますます 二階へと足を踏み入れなくなったという。

しかし、物音は、どんどん大きくなるし、眠れない日が続いているようで、どうしても気になって仕方がないということで、彼女の家に伺うことにした。

私に何ができるか?わからないが、早く彼女を安心させてあげたい。このままでは、精神不安定になってしまうような気がする。

彼女の家は、確かに一人暮らしには、少し大きすぎる家。玄関を入って、目の前には階段がある。左には廊下があって、右手には、トイレ、洗面所があり、左手には、和室への扉がある。突き当りに居間があり、その奥に台所。古いといっても、築35年といったところだろうか?

居間で、彼女と少し話しをし、いよいよ二階へと上がってみることになった。

二階への階段を上がっていくと、何かのニオイがする。どんどん二階へ上がっていくと、「あ、このニオイは、線香の香りだ。」と気づく。たぶん、彼女は、このニオイもわかってはいないだろう。そんな話しはしてなかったのだから。

二階の手前側には、和室があり、奥には洋室がひとつづつある。奥の洋室は、息子さんが使っていた部屋であろう。整理整頓がされ、息子さんのものであろうものがまだ残っている。

まだ 昼間の時間なので、それほど 変な違和感のようなものはないけれど、音の出どころは、和室であると確信した。なぜか? それは、線香の香りがするのは、和室だけだから。きっと、何かがある。そう直感的に思った。

そういえば、和室の明かりがつかないと言っていた。明かりをつけてみると、何事もなく明かりがついた。

「この間は、つかなかったのに・・・・。なぜ? どうしてつかなかったんだろう?」

「ちょっと、ごめんね。あちこち 開けてみても構わない?」「うん。大丈夫」

押入れの扉を開けてみたところ、ふわっと また線香の香りがする。上段には、キレイに整理整頓され、たたまれた布団。その下段には、二段の衣装ケースが並んでいる。反対側の扉を開けてみる。上段には、枕や座布団などがキレイにおさまっていた。下段にも同じように衣装ケースが・・・・。あれ?

少し奥まって見えないように、大きくて黒い木箱がある。しかも、線香の香りが強いのが、この箱のような気がしてならない。

「ごめん、気になるので、出してもいいかな?」「うん」

押し入れの奥から、出てきたもの・・・・それは、仏壇だった。

「え・・・これ??  ちょっと 待って・・・どうして?? どうして こんなところに??」彼女は、ビックリしていた。

扉を開けると、少し古い女性の写真と遺影。

「これ・・・・夫のお母さんです。」

「夫と離婚をした時に、夫が持っていくと言っていたんです。気がついたら無くなっていたので、持っていったものだと思っていました。まさか、そんなところに隠してあるなんて・・・・。」

仏壇は、ここから出してあげて、掃除して、毎日ごはんと水を替え、線香をあげてね。ずっと供養されてなかったから、怒っても当然です。きっとあなたに、気づいて欲しかったんでしょうね。私はここにいるよ?って。ここから出してちょうだいって。わかってほしくて、夜中に物音を出したりしてたんじゃないかな?背中を押したのだって、ケガをさせるつもりではなかったんじゃないかな?

それから数日後、元夫が、母親の仏壇を取りにきました。女の家に転がり込んだこともあって、さすがに仏壇はもっていけなかったんだと。でも、きちんと事情を話し持って行くことにしたようです。

「お母さん、怒ってたんですからね?」  って言えたでしょうかね?

 あれから、彼女の家の二階から 物音はしなくなったそうです。 彼女は、今もその家に住んでいます。




子供

今3人の子供がいる。普段は、怒ったり笑ったり、とにかく騒がしい家族。

でも、今回私自身がインフルエンザにかかってしまった。子供達にうつすとマズイなと、子供達は、実家に預けたのです。子供達を預けて、数日経つと、1人の時間がほしいなって思ってたのに、1人でいることは、とてもツライことだとわかった。

いつもすぐそこにいるはずの子供達がいない。それは、とても切ない。今何してるのだろう?泣いてないかな?ごはん、食べてるのかな?気になって気になって仕方がない。家族って、誰か一人が欠けてもダメなんだな。1人で時間を過ごすのがとっても長いことなんだって。

1度離れたからこそわかることがある。家族の大切さ。私は、子供達をちゃんと愛せているんだなって。もうすぐ会える。もうインフルエンザになんか、かからないんだから。