++鎧++ Y・O・R・O・I 怖い話
私たちは、夜のデートを楽しんでいた。車で夜景を見るのもそのひとつだった。
彼と車で、いつものようにおしゃべりを楽しんでいた。
そこは、いつもとは違う夜景スポットだった。ひとけもないし、そこからの夜景はとても美しかった。
そこは、かつて、城をたてるために、作った城壁だけが残されている。
あたりは、静まり返り・・・・車のエンジン音もさせてはいなかった。夜景を楽しむために・・・・。
彼が・・・・首をかしげた。
「どうしたの?」
「いや・・・・・何か音がしたような気がしたんだけど・・・」
「そう? 私には聞こえないよ」
「そうか?」
「気のせいじゃないの?」
「そうかもしれないな」
いちおう、あたりを見回してみるが、人の気配はない。
彼が言ってた音も車の窓をあけて、聞いてみたけれど・・・・不可思議な音はしていなかった。
きっと・・・・空耳よ。気にしないほうがいいのだろう。
そして・・・また少し時間が過ぎていく・・・。
「やっぱり音がする!」
「なんの音なの?」
「鎧のガチャ・・・ガチャ・・・という音と鈴のリーンという音・・・・」
「そんな音・・・私には、聞こえないよ」
「近づいてくる・・・・・」
「え・・・」
「俺たちのほうに・・・・その音が近づいてくる」
ガチャ・・・・ガチャ・・・・リーン・・・・・ガチャ・・・・・ガチャ・・・・・・
彼は・・・その音を聞いて・・・・どんどん青ざめていく。
彼には、何かが聞こえるらしい。私には、聞こえないのに・・・・。
「そばに・・・・近づいて・・・・来た・・・・」
「え・・・・・」
「早く!早く車を出してくれ!」
「・・・・わかった」
車のエンジンをかけようとするが・・・・うまくかからない。
ガチャ・・・・ガチャ・・・・リーン・・・・・ガチャ・・・・・ガチャ・・・・・・
「どうした?」
「エンジンかからないの」
「早く逃げないと・・・・あいつらに、殺される」
「え・・・・・」
あせっているせいか・・・なかなかエンジがかからない。
何度も何度も車のエンジンをかける。
ブルルン・・・・
「かかった」
「さぁ、早くココから出よう!」
「うん・・・・」
ガチャ・・・・ガチャ・・・・リーン・・・・・ガチャ・・・・・ガチャ・・・・・・
「どうしたんだ?」
「足が・・・・・・動かないの・・・・」
「なんだって!」
「なぜか・・・わからないけど・・・・足が・・・動かないの」
私の足は・・・・動かなかった。まったく、動かすことができないのだ。
つい先ほどまでは、動いていたのに・・・・エンジンがかかると同時に動けなくなっている。
「どうしよう?」
「運転を変われ!」
「でも・・・あなた免許ないじゃない・・・・」
そう言って、彼は私を助手席へと追いやり、運転席に座って、車を走らせた・・・・。
何か・・・とてつもない恐怖から逃げるように・・・彼は、アクセルを全開にして・・・・その場から、逃げた。
ガチャ・・・・ガチャ・・・・リーン・・・・・ガチャ・・・・・ガチャ・・・・・・
その音は、車の走る音とともに、いつしか聞こえなくなっていた。
彼は、震えながら・・・・
「あれは・・・・武者だった」
「え・・・・」
「君には、聞こえなかったの?鎧の音と鈴の音」
「聞こえなかった」
「聞かなくて、よかったかもしれないな」
「・・・・」
「車を走らせようとした時・・・・あいつは、目の前にいたんだ」
「・・・・・・」
「俺たちに・・・・刀を振りかざそうとしてた」
「え・・・・・」
「お前は、大丈夫なのか?」
「私は・・・・誰かに・・・・足をつかまえられてた」
「動かないんじゃなくて・・・動かせなかったのか?」
「そう」
「あぶなかった・・・・」
「ホントに殺されるかと思ったよ」
彼は、車を止めた。
フッと私の足が軽くなった。
「あ・・・・足が・・・・足の感覚がもどってきた」
「そうか。呪縛から・・・解かれたか・・・・」
「今のは・・・・なんだったの?」
「あそこでは、昔・・・戦いがあったんだ。そこで亡くなった武者なのかもしれない」
あそこで・・・もし・・・・車を出せなかったら・・・・どうなっていたのだろうか・・・。
でも、実際に・・・この近くで、「首なし武者」を見たという人は多い。
そして、現在もまた・・・・その城跡は、そこにある。