F・U・B・U・K・I 怖い話
雪は、時に美しく、神秘的です。
しかし、雪は、目の前にあるものを消してしまうこともある。
そして、その冷たさで凍え、命を落としかねない。
--吹雪-- KOWAI KOWAI*
これは私と彼と、私の友達2人の4人グループで、真夜中のドライブをしている時の話です。
友達の一人が、興味本位で、心霊スポットに行ってみようと提案したのがきっかけで、私たち4人はそこへ足を踏み入れてしまったのです。
・・・薄暗い1本道を少しづつ車を山のほうへと走っていくと、友達からこんな話を聞くのです。
「ここの奥には、墓地がある。そこで起こった実際の話らしいんだけど・・・」
友達が、ここであった実話を重い口調で話し出す。
「実はね、ここで1人の女性が置き去りにされたんだ。
僕たちと同じように男3人女1人というメンバーで車でここに来たんだけど、僕たちとは違う理由でここにその4人は来ていたんだ。」
・・・次の言葉に、息をのむ。
「その女性は、その理由を知らされてはいなかった。
なぜなら、この男たちは、彼女を強姦しようとしていたから。このひとけのいない所でね。
彼らは、この奥へ入ると彼女を強姦した。嫌がる彼女を無視して、男たちは、本能のまま、彼女を乱した。」
「それから、彼らは、ここに彼女をそのまま置き去りにしていった・・・・。
その後、彼女がどうなったのかは、誰も知らない。
ただここに、女性の霊魂が浮遊しているという話をどこからか聞いた。ウワサでしかないけど」
何年前の話なのか、わからないけど・・・そういうウワサが流れ、ここは心霊スポットになっていることは、間違いがない。
その奥地に、私たちは、車を走らせた。何が起こるのか・・・・わからないまま。
その奥には、墓があった。小さなお墓が、いくつか並べられ、無残にも放置されているようだった。
ここは、隠れキリシタンの墓地。心霊スポットと言われていることもあって、何人もが訪れているようだ。
不思議なことに、ここに来ても、何かが起こる気配は、まったくなかった。
ただ・・・冷たい空気が流れている。そんな感じでしかなかった。
「ただのウワサだったみたいだね。何も起こらない。」
「デマだったのかな? じゃあ、引き上げるか」
そういって私たちは、また車に乗り込んだ。
そして、来た道をまた、戻っているはずだった・・・・。
「おい!・・・雪が降ってきた」
「さっきまで、降ってなかったよね」
「でも、少し時期的におかしくないか?」
パラパラと、雪が降り始めた。そして・・・進めば進むほど、その雪は、激しくなっていく。
そのあと、車の中からは、まったく視界がなくなってしまったのだ。
車からは、今来た道も走ってきた道もどこから来たのかもわからなくなっていた。
視界がない・・・。
あるのは、車を取り囲む吹雪だけ。
「このまま走るのは、危険だから、少し雪がやむまで、止まるね」
そういって、車を止めた。
その時・・・・私に、冷たい風がふれた。
「キャー・・・・・・・」
女の人の叫び声だ!
しかし!! その叫び声をあげたのは私だった。
目を開けるとそこには・・・3人の男がいた。
3人の男たちは、私を押し倒し・・・。
着ているものをすべて脱がされ、男たちは群がった。
次々と男たちに、おかされていく・・・。
「助けて・・・」
こんな場所で、誰かに助けを求めても誰かが助けにくるわけがない。
深い闇と恐怖の中に・・・男たちの荒い息づかいだけが聞こえてくる。
「ヤメテ・・・・」
「ダ レ カ ・・・ タ ス ケ テ ・・・・」
「イヤー!!」
何時間が過ぎたのだろう。私は、気づくと雪の上にいた・・・。
冷たい雪の上に、裸のまま・・・そこに放置されたのだ。
車の走る通りまで、いったい何分かかるのだろう。
そこまでいかなければ私は、きっとこのまま・・・・・しぬ。
「誰か!!助けてー!!!」
声がかれて、叫ぶこともできない。悔しさで、涙がこぼれる。
「どうして・・・ どうして・・・・」
雪は、私の身体を心の奥底まで冷やしていく。
「寒いよ・・・・ 」
でも、必死に歩いた。人のいる通りまで、足の感覚が、わからなくなるくらい、ずっと歩きつづけた。
そして、歩く気力さえも失い・・・そこに倒れこんだ。
「あぁ・・・ 私は・・・ このまま・・・・ しぬ・・・」
「誰か・・・・お願い・・・・・ 助けて・・・・・」
意識が遠のいていく・・・
「おい!大丈夫か?」
目を開けると、見慣れた彼の顔があった。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
私は、ボロボロと泣き崩れた。あれは、彼女が見せた幻影だったのだ。
彼女が、私に自分の記憶を幻影として見せたのだ。
「怖かった・・・ ホントに・・・ 怖かったよ・・・」
私は、車を止めたあと意識を失っていたらしい。
彼らは、私の異変に気づき、何度も叫んでいた。
彼らの身には、私のような異変は、起きなかったのだ。
そう・・・それは、彼らが男であるから。
女の人にしか見せない・・・彼女の幻影。
彼らは、少し視界がよくなると、あわてて車を走らせたらしい。
私を病院へと連れて行くために、いそいで山を下りたのだ。
山を下りるともうそこは、雪なんか降ってなかった。
それからすぐ、私が、目を覚ました。
彼らは、ホッとしていた。
でも、私からあの暗い闇と恐怖は、消えずに記憶に残っている。
雪が降り、あの場所の近くを走ると思い出す。
・・・彼女の残した私への記憶。
あの場所で、彼女はしんでしまった。
誰にも知られないまま、あそこで、淋しく・・・。
そして、今もきっと・・・ 女性にだけ、あの恐怖の幻影を見せているのかもしれない。